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2009年4月21日

静脈内鎮静法とは?そのメリットとは?

静脈内鎮静法とは?メリットとは?歯科治療はすべての人々がその対象であり、何事もなく終わって当然と思われています。しかしながら実際は、歯科治療は患者さんにとって大きなストレスです。
緊張や不安・恐怖は、合併症を悪化させたり、神経性ショックをはじめとする全身的な偶発症を発生させる原因となります。予備力の低下した有病者や高齢者ではとりわけ注意が必要となってきます。


静脈内鎮静法とは?メリットとは?歯科治療を安全に行うためには、疼痛を確実にコントロールするとともに、精神的、肉体的なストレスを可能な限り緩和させることがとても大切です。

このページでは静脈内鎮静法の基礎知識について解説します。

静脈内鎮静法とは?

静脈内鎮静法とは?静脈内鎮静法とは、静脈注射で抗不安薬や静脈麻酔薬などを用いて持続的な鎮静状態にするものです。緊張や嘔吐反射、疼痛反射等の有害反射を抑制し、安全で快適な状態を維持することができます。

誤嚥の危険を回避するために、適度な嚥下反射を残しつつ、過度な緊張が取り除かれ、傾眠(眠ったようなうつらうつらした)あるいは入眠状態になります。笑気吸入鎮静法に比べて、はるかに確実で安定した鎮静状態が得られ、治療時のイヤな記憶が残らない健忘効果が得られる利点があります。

一方で薬に対する感受性や過量投与によって、時として呼吸や循環が過度に抑制されてしまう可能性もあり、バイタルサインの持続的な監視、緊急時に適切に対応できることが実施条件となっています。

静脈内鎮静法(Intravenous Sedation:IVS)は治療のストレス緩和のために最適な管理方法として発展してきました。最近ではリラックスして治療を受けていただくための手法として、究極の無痛治療法、無痛鎮静法、リラックス治療法などと称して徐々に広まってきています。

「静脈内鎮静法」のメリットとは?

静脈内鎮静法においては意識がある状態を保つことが基本精神的な緊張がなくなりリラックスした状態になります。

●肉体的なストレスが緩和されるので、治療や手術のために長時間口をあけたままにしても苦痛を伴いません。
●治療の刺激に対する反応が抑制されるので、循環・呼吸状態などのバイタルが安定します。
●健忘効果があり、局所麻酔や治療時のイヤな記憶はほとんど残りません。
●点滴で静脈路を確保しているので、緊急時にも迅速に対応できます。

患者さんにとっては、緊張が取り除かれウトウトしている間に局所麻酔の注射や手術が進み、気が付いたらもう終わっている、長い時間なのにあっという間に感じられてしまうというメリットがあります。

術者にとっては、侵襲が大きいサイナスリフト、ソケットリフトや骨移植、あるいは広範囲や多数のインプラント埋入手術、多数歯の抜歯、歯根端切除術、歯周外科手術、長時間神経を集中しなければならない多数歯の支台歯形成や補綴処置、複雑な歯内療法などにおいて有用であることは言うまでもありません。

加えて術中の患者さんの全身状態の管理、ペインコントロールを歯科麻酔科医に任せることで役割を分担し、より質の高い診療を提供することができます。余裕が出来るので新しいシステムを用いたり、術中に患者さんの耳をあまり気にすることなく会話できるので若い先生やスタッフの指導をすることも可能です。

歯科麻酔科医は患者さんの代理人として、安全で快適な状態を適切に維持し、患者さん、術者の先生双方のストレスを出来る限り減らすことができるのです。

適応患者について

・治療や手術を少しでも楽に受けたいと希望する方
・歯科治療や局所麻酔注射などに対して不安や恐怖心が強い方
・過去の歯科治療で、迷走神経反射(神経性ショック、疼痛性ショック)や過換気発作を起こしたことがある方
・高血圧、心疾患、甲状腺機能亢進症などの全身疾患を有し、歯科治療や手術で生じるストレスを軽減し、循環動態を安定させる必要がある方
・治療や手術の侵襲が大きい場合
・治療や手術部位・体位に困難が伴う場合
・嘔吐反射があり、治療や手術が困難な方
・笑気吸入鎮静法が実施しづらい場合
└過換気症候群
└鼻閉・口呼吸
└鼻マスクの使用が難しい
└体内に閉鎖腔(気胸、腸閉塞など)がある
└眼科手術で眼内にガス気泡を注入した既往がある(網膜剥離の再付着手術後など)

禁忌症について

・歯科治療・手術に優先すべき加療を必要としている重篤な全身疾患がある方
・使用する薬剤に過敏症がある
・緊急時の気道確保が困難(開口障害、小顎症、強度の肥満など)
・使用薬剤に対する禁忌症
・妊娠初期または妊娠している可能性がある
・実施に際して協力が得られない患者さん

使用薬剤による禁忌症
・ベンゾジアゼピン系麻酔薬に関して
└重症筋無力症
└HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビルなど)を投与中
└急性狭隅角緑内障

使用薬剤について

使用薬剤について・ベンゾジアゼピン系麻酔薬
ジアゼパム、ミダゾラム、フルニトラゼパム

・静脈麻酔薬
プロポフォール、塩酸ケタミン

・ベンゾジアゼピン拮抗薬
フルマゼニル、アネキセート

・中枢性アドレナリンα2受容体作動薬
デクスメデトミジン塩酸塩、プレセデックス

*抗生物質、ステロイド、鎮痛剤等の注射薬の用意もございますので、ご要望があればお申し出ください。

その他必要な器材・薬剤について

必要な器具・器材について・点滴セット、固定用テープ
・静脈内留置針
・駆血帯
・注射シリンジ
・注射針
・吸引カニューレ
・術中管理用薬剤
・酸素投与装置(酸素ボンベ、経鼻カニューレを含む)
・薬剤持続注入用TCIポンプ
・モニター各種(血圧計、心電計、SpO2、ETCO2、BISモニターなど)
・救急薬品
・緊急気管穿刺キット等(トラヘルパー、14G留置針)
・緊急気管内挿管セット(喉頭鏡、気管内チューブ)
・アンビューバック
・AED

*酸素投与装置以外は持参いたします。

静脈内鎮静法施行時のモニタリングについて

静脈内鎮静法施行時のモニタリングについて意識、換気、酸素化、循環(脈拍数と血圧)、心電図について、連続的にモニタリングし、必要に応じてBISモニター終末呼気炭酸ガス濃度(*ETCO2)を測定します。

意識
・呼びかけへの応答を断続的に評価
・**BISモニターによる鎮静度の評価

換気
・胸郭の動きを断続的に観察
・呼吸音の聴診や患者さんとの会話によって換気状態を把握
・終末呼気炭酸ガス濃度(ETCO2)の測定は、呼吸抑制の予防と早期発見に有用

酸素化
・***SpO2を連続的に評価
・粘膜、皮膚、血液の色を断続的に評価

循環
・脈拍数を連続的に評価
・血圧を断続的に評価
・心血管系疾患や呼吸疾患を、心電図を連続的に用いて評価

ETCO2を変動させる因子
・末梢組織におけるCO2の生産(代謝)
・ガス交換による肺でのCO2の換気能(呼吸)
・末梢から肺へのCO2の運搬(循環)
・換気が良好、低体温、循環血漿量の減少で低下
・換気の低下、高体温、疼痛、閉塞性肺疾患で上昇

*ETCO2(呼気終末二酸化炭素分圧)
動脈血CO2分圧(PaCO2)と高い相関を示す。CO2の赤外線吸収を利用して、非観血的、連続的に測定する。

**BISモニター
前額部に電極を装着し意識レベルに関係する能皮質活動を脳波の周波数、振幅と干渉を基に算出してBIS値として連続表示する。0-100までの数値で示され、数値が低いほど鎮静度が高い。70前後が良好な鎮静度を示すといわれている。

***SpO2(動脈血中酸素飽和度)
酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの赤色光、赤外線光の吸光特性の差を用いて、動脈血酸素分圧(PaO2)を推測する。これにより低酸素血症の早期発見が可能になる。正常値は95~100%。


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